鉄筋コンクリート住宅のリノベーション
1964年東京オリンピック開催の年に建てられた鉄筋コンクリート3階建て住宅をリノベーションしました。この建物は柱、梁、床版(スラブ)が鉄筋コンクリートで出来ています。コンクリートブロックの壁は構造要素ではありません。このような構造形式を「純ラーメン構造」と言いますが、構造的制約を気にせず自由に壁を取り除くことが出来るので、間取りの自由度の高いリノベーションに適した構造です。逆にツーバイフォーや鉄筋コンクリート壁式構造のように壁そのものが構造体である場合は壁を変更することがほぼ不可能な場合が多いのです。
今回のリノベーションは47年前に建てられた3階建て住宅の2階と3階に孫世代が住むためのものです。大きなテラスから見える緑豊かな眺望、日当たり、風通しのよさなどを室内にどう取り込んでゆけるかを考えることが設計の出発点でした。リビングとテラスの間に両者をつなぐためのサンルームを増築し、室内からテラスまで連続性の高い空間となりました。またLDKは既存の間仕切り壁を撤去し、小さく間仕切られていた間取りを出来るだけオープンで大きな空間にしました。テラスにはパーゴラを設け、グリーンカーテンで夏の直射光を避けるようにします。パーゴラの下をウッドデッキにして外の生活も楽しめるようにします。
キッチンはアイランド型の造り付けにしました。ダイニングテーブルの位置には特注のペンダントライトを配線ダクトに吊るしています。洗面カウンターはIKEAで購入したものを壁に取付けています。次の春にはパーゴラのツタを植えて夏に備えますが、テラスが緑の庇に覆われるのが楽しみです。床フローリングは竹フローリングに蜜蝋ワックス仕上げ、壁はオガファーザーにデュブロン(水性塗料)塗りです。
リノベーションやリフォーム(既存建物の改修)という建築方法は、既存建物の構造的制約や周辺環境など、すでにある決められた状況の中で、いかにその場所に新たな価値を創造することができるかを追求することだと思います。建物を再利用することで環境負荷を減らし、コストを抑えながら周辺をいきいきした環境に一新することができるのがリノベーションの楽しみでもあります。